ユーリカのひとりごと

映画の感想や日々思うことなど

「すずさん」は「すずさん」であって、「のん」ではないという話(「この世界の片隅に」)

※下記はネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください

 

 

 

TwitterもといWeb上を見渡す限り、大絶賛の嵐である。

背景の作画がすごい、綿密な取材がすごい、飛行機の爆撃音がすごい。それから何より、のん=能年玲奈の演技がすごい。

 

確かにその通りだ、その通りなんだけれども、劇場で感じたささやかな違和感を忘れないうちに記しておきたい。当然ながら個人の主観に基づく感想であり、作品の価値を下げる意図は全くないことも念のため述べておく。

一言で言えば、「のんさんの役者っぽさ=声優っぽくなさが気にかかる」という事である。場面をざっと列挙すると、例えばこういう所である:

・子供の姿と成長後の姿で、声の高さなどが変わっていない

・喋り方の癖が少々わざとらしい気がする(主人公がマイペースで個性的だから、という意味ではなく、映画の世界観から浮いている…気がする)

・最後の慟哭シーンで、映像(表情)と声の雰囲気に差がある(このシーンだけ特に演技がアニメではなくドラマ的であり、現実に引き戻される感覚)

 

この違和感は、小さなしかし固く溶けないしこりとなって心の隅に残り続け、二度目を見る足を止めているのだ。普通の人にとって映画は(特に劇場では)一度のみ観るものだろうから、おかしな感想であることは百も承知、承知なのだが。

個人的には、実力のある声優さんが起用されなかったことだけが、残念でならないのである。

 

そして、のんさんに非がないことは百も承知だが、彼女の事務所問題に端を発したメディアの圧力に、作品自体が被害を被っていることが無念でならない。

もし彼女が起用されていなかったら、あらゆる広告媒体から避けられて不当に宣伝が取り消される事態も避けられたのではないか、もっと多くの人に、普段アニメを見ないような人達にも知られていたのでは…と思わずにはいられないのだ。

 

(くどいようだが、「この世界の片隅に」という作品自体は大好きだ。映画化が決まる随分前から原作を愛読していたし、鉛筆書きのような独特のタッチや、当時の生活風俗を紐解くような内容も興味深く読ませていただいた。)

 

…誰か同じ感想を共有する人がいないかなあ、というささやかな願いを込めて、ネットの海へ放流してみたい。これが個人名義のTwitterへの投稿だったら、或いは映画レビューサイトもしくは「はてな」的な場所への投稿だったら何かしらのフィードバックが得られただろうが、炎上を恐れて個人ブログへ綴る気弱さを許してくれ。