映画「マリッジ・ストーリー」感想
主演のアダムドライバーが大好きで、この映画をずっと楽しみにしていた。このためだけにNetflixの契約までしたのに、それから数ヶ月間ずっと再生できずにいた。
理由は明らかで、自分の両親が今まさに離婚調停へ秒読みだからだった。そうでなければ、もっと素直に観られただろうなとは思う。
映画の主人公は、離婚をすることになったNYの舞台監督チャーリー(アダム・ドライバー)と、LA出身で女優の妻ニコール(スカーレット・ヨハンソン)。お互いに加えて、間を揺れる8歳の息子ヘンリーや双方の弁護士とのやりとりをめぐる物語だ。
流れだけ見ると地味に思えるが、彼らが歩んできた人生が丁寧に描き出された、とても素敵な映画だった。
何より主演2人の演技が素晴らしい。チャーリーとニコールという、一人と一人の(二人とは敢えて言わない)人生がそのまま存在してきたかのようなリアルさは、今まで見てきた映画のなかで間違いなく群を抜いていた。
スカーレット・ヨハンソンもアダム・ドライバーも過去作を通じて大好きになった役者で、それゆえにあまり作品の登場人物として没頭できないかもしれない(ブラックウィドウとカイロ・レンの影がちらつくのでは?)と勝手に心配していたが、それは完全なる杞憂だった。
人の話に耳を傾けない(そして、それ故に成功したであろう)チャーリーと、子どもと全力で遊び、自分の人生を生きたいと願うニコールが、はっきりとした輪郭を持って映し出されていた。
本当は言うはずじゃなかったのに口から滑り落ちてしまった言葉や、互いの才能を心から認めていて、それを他人にちょっと自慢するときの表情など、一つ一つがたまらなく切なくて泣けてくる。
幸せな結末とは言えないかもしれないが、互いの存在を認め合う二人が心底羨ましい。今の私の両親には無理そうだから、尚更そう思ってしまう。
最後に、こだわり抜かれたであろう彼らの衣装について分析された記事があるので、是非こちらも読んでいただきたい。
映画衣装の密かな愉しみ:第2回『マリッジ・ストーリー』距離と変化、そして、あるひとつの仮説
https://jp.ign.com/topic-15/42524/feature/2
追記 この映画を見た証を手元に置いておきたいと願うものの、本作はNetflixオリジナルのためディスク媒体が販売されていない。せめてもの思いでサウンドトラックを注文することにした。彼らが劇中で歌っていた曲が入っていたら最高だったのだが、それを差し引いても、優しくてどこか淋しい、素敵なアルバムとなっている(トイ・ストーリーの ランディ・ニューマン が手掛けている)。
主人公たちのテーマ曲名が「What I Love About Nicole / Charlie」となっているのも、映画本編を観た後には胸がぎゅっと切なくなる。
Marriage Story (original Music From The Netflix Film)
(これはFilmarksの投稿に加筆したものです)