ユーリカのひとりごと

映画の感想や日々思うことなど

デイジー・リドリー「愛はどこへ」インタビュー記事、全文翻訳

ここ数日、スターウォーズファンの間で話題になっているデイジー・リドリーのインタビューがある。日本語版の第一報はRIVERの記事で、彼女のコメントから「愛はどこに」と題されたそれは、ファンの心を揺さぶる内容だった。

theriver.jp

しかし元のインタビューとその関連記事を翻訳前に読んでいたため、これが相当圧縮された記事であることが気にかかった(記事としての分量を考えると仕方がないとは思う)。だがソーシャルメディアを見るにつけ、その内容を(おそらく真逆に)勘違いしている人が多いように見えたので、海外の有名なファンサイトstarwarsnewsnet.comに掲載された長めの書き起こしを含む記事の全文翻訳を作成した。

念のため、これはインタビュー自体全文の翻訳ではなく(書き起こそうかと一瞬思ったが、1時間を超えるポッドキャストを文章にして、更に翻訳するのは時間がかかりすぎる)、また当然ながら非公式であるため、問題があればすぐ削除する予定である。

www.starwarsnewsnet.com

 

デイジー・リドリー、動揺した反応が「スカイウォーカーの夜明け」のオンラインファンの悪口文化へ光を当てる

by ジョン・フーイ - 2020年4月13日

 

デイジー・リドリーは5年以上にわたりスター・ウォーズに出演しており、ファンの良い面も悪い面も見届けてきた。新3部作が終了し、レイの物語も結末を迎え(少なくとも今のところは)、彼女は『スカイウォーカーの夜明け』を好まないファンからの絶え間ないネガティブな意見に晒されることや、それが映画の製作者たちに与える影響、そして彼女のソーシャルメディア上での振る舞いについての個人的な見解を語った。オンラインのファン文化についてのリドリーの考えは、私たちファンが自分自身を見つめ直し、スター・ウォーズフランチャイズとその未来に与える影響を省みる絶好の機会とを与えてくれた。

リドリーがポッドキャスト「DragCast」に出演したときソーシャルメディアについて尋ねられ、なぜアカウントを持たないのか(一部の人が言うような劇的な理由ではない)、またスター・ウォーズ最新作『スカイウォーカーの夜明け』に対する反発で暴れることを選択したファンに対する彼女の考えをはっきりと述べた。

 

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まず、デイジー・リドリーソーシャルメディア上に現れない理由をもう一度明らかにする必要があるだろう:

"(SNSを)やろうよって誘われて、その時は『オーケー』って感じだったけど、ある日L.A.の友達の家にいるときに嫌になって『ああ、インスタグラムには載りたくないな』って思ったのを覚えてる。友達は『じゃあ、やめたら?』って反応だったわ。そして『そうね!』ってなって。それは本当に素敵な、自分に素直な決定だったの。『あぁ、やらなくていいのね!いいことだわ』って感じだったから。普段からシェアするものは制限してたし、正直言って 私の人生はそんなにワクワクしないわ。(シェアせずに)セパレートなことがたくさんあったのよ" 

それから、リドリーは2015年の『フォースの覚醒』、世界中から普遍的に愛された映画の公開からどのような変化が起きたかを語っている。彼女が注意深く選んだ言葉の間を読むと、ソーシャルメディアが以前よりもはるかに多くの否定性(ネガティビティ)の表面化をもたらしたという。

"正直、映画ごとに全く変わってしまった。98%くらいは素晴らしいものだったわ。でも最後の作品は、本当に複雑だった。1月はあまり良くなくて変な感じで、最初に見せてもらったときには愛のようなものを感じてたけど、それから『愛はどこへ行ってしまったんだろう』って。今週、メイキングのドキュメンタリー映像を見たわ。愛に満ちあふれていて、その一部になったのは複雑な気持ちね。もちろん、誰でも何かを嫌う権利はあるけど、でもそれがソーシャルメディアの影響で少し変わったような気するのよ。

リドリーは、親が子どもに伝えるありふれた教訓を取り上げている:『何も褒めるところがなければ、何も言わないこと』。だがしかし、それはどんなファンダムでも実行に移されることはない。デイジーは『スカイウォーカーの夜明け』への反発に動揺しており、できるだけそれを避けようとしていることを認めた。一方で、人々が簡単に発言の場を持つことができ、その結果、より多くの意見がパブリックに届くようになってることも認識していると述べた。

"一般的に、映画を見にいったあとにソーシャルメディアでそれをシェアする人は多いと思うけど  ー  私はアカウントを持っていないから、仮の話になるわ  ー  もし、私が観た映画を気に入らなかったとしても、ツイートはしないと思う"

彼女は続ける。

"でも、それはふつうの会話で、ありふれたことよね。だけど今はその会話がパブリックなものになっていて、私が見たくないものもある。正直、1月はニュースフィードをスクロールしてもスター・ウォーズの記事を見ないようにしていたの。見出しを見て『ああ、これは見たらつらいやつだ』って思ってた。そう、だから複雑だけど、その一部になれたことは本当に誇りに思うし、感激しているわ。 ええ、でもちょっと笑えるわよね"

 

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人がソーシャルメディアへ無限に投稿してしまうのは、話を聞いてもらって繋がりを感じたいと思うことのせいだと筆者は考えている。承認を求める人間固有の本能があり、何かについてのあなたの考えが「いいね!」や「リツイート」や「コメント」のシャワーを浴びることで、その承認欲求が満たされるのだ。しかしアウトプットがネガティブなものであれば、それは雪だるま式に膨れ上がり、サブカルチャーへ重大な影響を与えていく。筆者は何年にもわたり映画業界やルーカスフィルム内部の人々と対話してきたが、彼らはソーシャルメディア上で何が起きているかを注視していると口を揃える。現在筆者はためらいつつ発言しているが、重要なのは、誰が、特にコミュニティで正当な影響力を持っている人たちが何を言うか監視しているということだ。彼らはあなたが気付いている以上に注意を払っている。

欠点としては、クリエイターやタレントも非常に評判を意識しているということだ。ジョージ・ルーカスやJ.J.エイブラムス、ライアン・ジョンソンといったクリエイターたちが経験した地獄や憎しみを見て、スター・ウォーズに携わることが魅力的でなくなってしまう人もいる。最近、重要なプロジェクトのライターやその他の重要なクルーとして無名の名前が上がってくるのは、そのせいかもしれない。

実際、デル・レイ・ブックスの編集者トム・フーラーは、作家、監督、俳優よりもはるかに、はるかに暗いスポットライトの下にあるスター・ウォーズ本を書くための著者を見つけるのは難しいと公に認めた。

 

 スターウォーズ論議の激しさや、一部の読者が適切だと考えている作者の扱い方が、スターウォーズのために書いてくれる新しい作家を探すことに影響していないと言えたらいいのですが...。

そう言いたいですね。 本当にそう思います。 

— トム

 

スター・ウォーズの「ファン」が、映画や映画を作る人たちに対する否定的な意見、反発、憎しみでソーシャルメディアを汚染すればするほど、ルーカスフィルムにとっては、才能のある人たちが"そこまで汚染されていない水"のところへ簡単に移れるときに、遥か彼方の銀河系のプロジェクトで仕事をしようと説得するのが難しくなる。

ネット上の否定的な意見には、程度の差があるとはいえ、極端なものはクリエイターに暴力を振るうと脅すような意見もある。これを冗談だと言う人もいるだろうが、今の世の中で、これを面白いと感じる人がいるとは思えない。

 

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もし私が二発の弾丸が入った銃を持っていて、同じ部屋にヒトラービン・ラディン、JJエイブラムスがいたら、私はJJを2回撃つでしょうね。

 

多くの人は「この手の振る舞いは、映画を好きではなかった全ての人の代表ではない」と言って反論するだろうし、それは完全に正しい。言うまでもないことだ。だが「最後のジェダイ」で映画とライアン・ジョンソンへの憎しみが映画の公開後何年ものあいだ浸透していた(今日まで続いている)ように、ネガティブな意見の一定量かつコンスタントな出力は、たとえ敵意を持たずに行われたとしても、憎しみの文化を育み、発酵させている。デイジー・リドリーが言ったように、誰もが何かを好きではないと表現する権利を持っているが、その軽蔑や憎しみをノンストップで声に出すとき、それが何の意味があるのか筆者にはわからない。

あなたがスカイウォーカーの夜明けを見た後、劇場を去り、あなたのフォロワーにあなたが映画を憎んでいることを伝えるためにTwitterアカウントを作った場合、それは何の問題もなくよいことだ。あなたは映画の気に入らない点を指摘するために次の数週間を費やした?それは理にかなっている。あなたのメッセージは届いただろう。しかし5ヶ月間かそれ以上、常に同じ否定のドラムを何度も何度も叩き続ける必要性を感じていて、自分の考えが明確になっていない、あるいは人々の心に響いていないと思うのであれば、アプローチを考え直す必要があるかもしれない。

筆者は個人的にクローン・ウォーズやアソーカ・タノをそこまで好きになれないが、デイヴ・フィローニやアニメ部門を毎日のようにバッシングする代わりに、自分の好きなものについて話すことにしている。たまにはネガティブに転向してしまう自分もいるが、しかし、スター・ウォーズを大切にし、スター・ウォーズを成功させ、最高の映画製作者や才能を惹きつけたいと願うなら、ファンとしてより良いオンライン文化を一緒に作り上げていく責任があるかもしれない。全てのファンがオンライン上で他のファンの鼓動に注意を払っているわけではないが、その鼓動は縮小するものではなく、全てのファンダムの中で大きくなっていく部分だ。だから私たちは皆、内なるジェダイにチャンネルを合わせて、ソーシャルメディア上で(あるいは一般的に)、クリエーターやお互いにもっと礼儀正しく、敬意を持ち、親切にしてほしいと願うばかりだ。

このようなネガティブな文化はスターウォーズに限ったことではなく、他の映画やテレビのフランチャイズ、スポーツ、音楽、そして大勢のファンがいるものは何でも似たような問題に悩まされている。私はスターウォーズのファンは概して良い人だと思っているが、ネット上でファン同士が交流しようとすると、ネガティブな雰囲気が蔓延してしまうこともある。私たちは常に、ファンダムには善人がいることを思い出さなければならない…there are more of us.

(引用ここまで)

 

この記事に対する反響は大きく、サイトの公式Twitterだけでも既に150以上のリプライが付いている(「ネガティブな意見を言って何が悪い」とという反射的なリプライに、記事の執筆者が「ちゃんと本文は読んだ?」とコメントしている場面も)。

 

そして、もしイギリス英語が得意ならば、ぜひデイジーがインタビューを受けた元のポッドキャストも聞いてみてほしい。ロックダウン中、彼女が自宅ででブロッコリースープを作ってフォカッチャを焼いた話なども聞けて、ほっこりすること請け合いだ。

dragcast.net